「関西の高校サッカーを強くしたい」
2014年。
関西の高校サッカーをもっと強くするために、何か出来ないだろうか。
J-GREEN堺の脇のCOCOSで毎週のように話し合いが行われていました。
興國高校の内野監督と近大附属高校(当時 東大阪大学柏原高校)の森コーチ、東山高校の福重監督とBlue Wave の伊藤 誠氏です。
日本の高校サッカーには大きな課題があります。
学校スポーツであるということ。
そのために、受験の空白期間が空き、それまでの育成がいったん中断してしまうこと。
公式戦に出られる年代が各カテゴリーの最終学年に偏ること。
公式戦に出られない学年が強化するための大会がないこと。
スペイン遠征を経て、関西のU-16世代にも真剣勝負で戦える場が必要だと考えた興國高校の内野監督の呼びかけで集まった4人でした。
関東と中国ではU-16のリーグがすでに始まっていました。
関西でも、U-16のリーグができないだろうか。
高校1年生も、指導者も、レフリーも、全員を育てるためのリーグはできないだろうか。
会合は毎週のように行われました。
やるからには練習試合のようなリーグではなく、公式戦と同じような真剣勝負の場を。
リーグの大枠が固まると、次は共感してもらえるチーム集めです。
それぞれの監督たちが同じような熱い思いを持つ監督に話をし、最初のリーグを立ち上げる10チームが集まったのです。
みな、2つ返事で「関西の高校生のために何かしたいと思っていた」「その試みはきっと育成に役立つ」「関西サッカーをよくしたい」と賛同してくれました。
それが「オリジナル10」と呼ばれる最初の10チームでした。
関西U-16リーグ始まる
2015年。
オリジナル10によって始まった関西U-16~Groeien~は、監督たちの力によって「育成」に特化したリーグとして開幕しました。
※監督は当時の監督です
東山(福重良一監督)
神戸弘陵(谷純一監督)
奈良育英(上間政彦監督)
初芝橋本(阪中義博監督)
興國(内野智章監督)
四日市中央工業(樋口士郎監督)
履正社(平野直樹監督)
大阪桐蔭(永野悦次郎監督)
野洲(山本佳司監督)
東大阪柏原(山藤昌弘監督)
4月になると、総監督はトップチームのリーグ帯同や指導にあたります。
そのため、ルーキーリーグは若い指導者の育成の場としても有益でした。
レフリーも外部に頼み、お互いの学校のコーチが笛を吹く、ということがないようにしました。これをしてしまうと「練習試合」の様相になり、真剣味が欠ける可能性があるからです。
公式戦ではないオリジナルリーグが規則をしっかりと守り、きちんと運営をする姿勢ができたこと。これは東山高校の福重監督の力が非常に大きいものでした。
リーグのオーガナイザーとして、Blue Waveの伊藤氏はメディア戦略をもって無名の関西U-16~Groeienの知名度を高めるために尽力しました。
メディアから取材が来るようになり、取り上げられることも増え、全国的に注目されるリーグになりました。
関西のサッカーを強くしたい。
高校1年生からちゃんとした強化・育成の場を作りたい。
覚悟を持ってリーグ運営に挑んだ指導者たちの思いの輪はどんどん広がっていきました。
2020年には、関西U-16~Groeien~に参入するリーグとして登竜門が作られました。
2022年の参加校は、関西U-16~Groeien~20校、登竜門16校に及びます。
利権をふりかざす指導者は誰もおらず、関西全体のレベルが上がるよう、みな真剣にボランティア精神でリーグ運営に取り組んだのです。
グロイエンはオランダ語で「育成」という意味。
初期のグロイエンのエンブレムは関西地方の影をかたどったものでした。
関西全部で強くなろう。そういう決意のあらわれです。
これからの関西U-16~Groeien~
▲写真は2019年の開会式の様子
高校1年生のうちから同じような強さの学校の高校1年生たちと、真剣勝負の場に立ち、経験を積むこと。
これは今、どの高校でもできることではありません。
関西U-16~Groeien~は将来的に「海外や日本代表で活躍する選手が1人でも多く生まれ、関西がサッカーの地になるために関西を盛り上げてくれる選手がたくさん育つこと」を目指しています。
それは関西の高校サッカーの発展に、ひいては日本のサッカーの牽引につながるはずです。
関西からムーブメントを。
U-16から真剣勝負の場所がある。
これを当たり前の風景にするために、指導者たちは今年も新たな気持ちで1年生を迎えています。
2022年4月
お話を聞かせてくれた人:興國高校 内野監督